獣兵衛忍風帖 龍宝玉篇
エピソード
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かくれ里無惨
ヒルコの里から”竜の宝玉”を持ち出し山の中をひた走るヒルコ忍軍の一人・狼牙(ろうが)。里の仲間から追われ、さらに敵対する鬼門衆の忍者からも狙われる身に…。忍者同士の死闘が繰り広げられているその場で、たまたま眠りにつく者がいた。この男こそが「疾風の居合でカマイタチを作り敵を倒す」という雇われ忍・牙神(きばがみ)獣兵衛だった。
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旅立ち
狼牙は隠れ里で出会ったしぐれの首飾りにある紋章を見て光の巫女であることを確信、彼女を守ろうと鬼門衆と闘って無念の死を遂げる。一方、しぐれは自分を守るために死んでいった里の仲間を想い悲しみに暮れながら当所も無く山道を歩いていくのだった。
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邪恋慟哭(じゃれんどうこく)
獣兵衛を探して山道を行くしぐれ、濁庵(だくあん)、つぶての前に鬼門衆の邪視(じゃし)と煉獄(れんごく)が現れ、さらに光の巫女・しぐれを奪わんとするヒルコ忍軍・射干玉(ぬばたま)が煉獄に襲い掛かる。古寺に逃げ込んだしぐれ達は追手の邪視をやり過ごし、そこで偶然にも獣兵衛と出会うことに。しかし、舞い戻った邪視が再びしぐれに襲い掛かり、獣兵衛は否応なしに邪視と対峙することになるのであった。
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割れた宝玉
宝玉を盗み出したつぶてを捕まえた獣兵衛は、後をつけていた濁庵にしぐれは何者かと訊ねる。次の瞬間、今度は地中から無数の木の根が二人に襲い掛かり、宝玉を盗み出して逃げようとする。その木の根を切り払う獣兵衛。しかし、宝玉は二つに割れ獣兵衛はなんとか手を伸ばして片方の宝玉を掴んだものの、もう片方は奪われてしまうのであった。
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金剛童子
大泥棒・金剛童子を名乗る辰之助はある武家屋敷へ忍び込むが、すぐさま捕まって屋敷の主から小判の施しを受ける始末。そんな辰之助にマントを身に纏った怪しい男が目をつけていた…。一方、早朝から出立した獣兵衛たちは、橋の中ほどで鬼門衆の斬馬に出くわす。獣兵衛が相手をしている隙に、しぐれの腰にあった宝玉の片割れを奪って逃走するつぶて。宝玉を手に入れたつぶては、山道で出会った辰之助に宝玉を奪われて揉み合いとなる。そこへ役人が現れ、今度は辰之助の子分に間違えられて二人で逃げる破目になるのだった。
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雨宿り
雨の中を行く獣兵衛にすれ違いざま襲い掛かったのはヒルコの刺客・粘虫(ねんむ)。苦闘の果てにそれを退けた獣兵衛だったが、僅かに掠った粘虫の包帯には毒が塗られていた。霞む目とふらつく足でなんとか廃墟の武家屋敷に辿り着いた獣兵衛は、そこへ三人と同じように雨宿りをするため数人の一行が訪れるが、その中の一人は何故か片目が不気味に光っているのだった。
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蕾
山小屋で暫し休息をとるしぐれ、濁庵、つぶての三人。だが、それも束の間、夥しい買うのコウモリに取り囲まれ、地中からは宝玉の片割れを奪ったあざみの木の根が襲い掛かる。濁流へ落されるつぶて。身動きを封じられる濁庵。そして、しぐれに危険が迫ったその時、獣兵衛が現れ事無きを得る。翌朝、必死の思いで戻ってきたつぶての話から、あざみの居た場所へと向かう獣兵衛と濁庵。そこへ辿り着いた獣兵衛は、遠くから様子を伺うあざみを見つけると宝玉を濁庵に預けてその後を追うのだった。
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煉獄昇天
ここは暮坂峠。化物が出るとのうわさを聞きつけた二人組の侍が、それを退治せんと勇んでやってきた。一人が子鼠一匹も見当たらないと口にした途端、侍の首が崖下へと転げ落ちる。そして、現れた化物にもう一人の侍も腕を切り落とされてしまうのだった。翌日、麓の村でのその話を耳にした濁庵、つぶて、しぐれは、峠を避けて遠回りとなる街道を行くことにする。一方の獣兵衛は、例の峠を越えようとしていた。そこへまたしても現れた化物…。それは獣兵衛に最愛の弟・邪視を殺され。復讐と憎悪の念に燃える煉獄だった。
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はらわたに龍
山道を行くしぐれの前に現れたのは、知った顔の安兵衛をはじめとする柳生一族の者だった。「お迎えに参りました」という安兵衛の言葉とは裏腹に、いきなり殺意の剣を向けてにじり寄る一行。そこへ木の陰からヒルコの手練・臓腑(ぞうふ)が姿を現す。臓腑は次々と安兵衛の手下どもを一刀両断に退け、ついには安兵衛をも腸(はらわた)から飛び出した龍の一噛みで倒してしまう。そして、何も知らないというしぐれに光の巫女としての存在意義を説く臓腑。しかし、「幸せな普通の生活がしたい」としぐれが答えると、今度は鋭い剣先をしぐれに向けるのだった…
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ヒルコの真心(こころ)
ヒルコの里で牢屋に閉じ込められていた魯怪(ろかい)は、光の巫女に会いたい一心から脱走。ある村に辿り着いた濁庵とつぶての横を、魯怪が通り過ぎて行く。村の食料を根こそぎ盗み出した魯怪の仲間と間違えられた二人は、村人から追われる破目に…。一方の獣兵衛としぐれは、鬼門衆の襲撃を受けていた。逃げ道にも多勢の下忍たちが立ち塞がり、追い詰められてしまうしぐれ。そこへ光の巫女の臭いを嗅ぎつけた魯怪が現れる。嫌がるしぐれを頭上に担ぎ上げた魯怪は、呆気に取られる鬼門衆の忍たちと獣兵衛を尻目に一目散で走り出すのだった。
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柳生連夜(やぎゅうれんや)
波間を進む鬼門衆の軍艦の中にしぐれは囚われていた。その軍艦を無数のヒルコ忍軍の小舟が取り囲む。しかし闇泥(やみどろ)が砲弾の雨を降らせると、周囲の海はヒルコの血で紅く染まってゆく。しぐれは涙を滲ませながら、その様子をただ見ている他は無かった。一方の獣兵衛たちは南蛮船へと乗り込む。呉越同舟となったのは裏柳生の当主・柳生連夜とその家臣。更に連夜は獣兵衛に宝玉を渡すよう迫る。一触即発の空気が流れたその時、船員に追われた少女が獣兵衛に助けを求める。船員を追い払った後も少女は獣兵衛に纏わりつき、懐にあった宝玉を盗んで逃走。獣兵衛たちと連夜の一行は、少女を巡って宝玉の争奪戦を繰り広げることになるのであった。
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王朝復活
湯治場で暫し留まる鬼門衆の一行。その一角に拘束されていたしぐれを露天風呂へと誘う鬼門衆・写絵(うつしえ)。追いついた獣兵衛たちは温泉の縁に倒れたしぐれを発見するが、今度は闇泥たちに囲まれてしまう。そこへ無風(むふう)の率いるヒルコ忍軍が援護に入り、獣兵衛は奪われた宝玉の片割れも取り戻す。そして、完全体となった宝玉をしぐれに渡す獣兵衛。無風の一行と共に獣兵衛たちが古の王朝があったとされる山頂の火口に辿り着くと、しぐれに化けていた写絵が姿を現す。写絵に操られ次々と溶岩の中に身を投じるヒルコの下忍。更に闇泥の雷によって無風が火口へと落され、遂には濁庵までもが獣兵衛を溶岩の中へ引き摺り込もうとするのだった。
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青天飄飄(せいてんひょうひょう)
濁庵と共に溶岩が噴出する火口へと落ちていった獣兵衛。闇泥が龍の宝玉を道祖岩に埋め込むと岩は青白く光り出す。そして、光の巫女としての記憶が蘇ったしぐれは笛の音を奏で始める。それが終わると道祖岩は消滅し、古の王の墓へと通ずる入口が姿を現した。その様子を見ていたつぶても鬼門衆に見つかってしまう。そこへ助けに現れたのは、なんと獣兵衛と濁庵だった。更に柳生連夜の一行も乱入し、辺りは修羅場と化していく。その隙を縫って洞窟の奥へと進む獣兵衛たち。その先に待ち受けるものとは…そして、光の巫女の真なる力とは如何に…。