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    3. 惡の華

    惡の華

    惡の華
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    作品情報
    ボードレールに心酔する少年、春日高男。抗いきれぬ衝動のままに、密かに想いを寄せる佐伯奈々子の体操着に手を掛けたその時から、彼の運命は大きく揺れ動くことになる。その行為の一部始終を目撃した、仲村佐和の手によって…。閉塞的な小さな街の中で、鬱積してゆく思春期特有の若者たちの激情はどこへ向かうのか。これは誰もがいつかは通る、あるいは既に通り過ぎた、思春期の苦悩と歓喜との狭間で記される禁断の青春白書である。

    エピソード

    • 第一回

      第一回

      息が詰まるやうなこの小さき町の片隅で崇高なる書物の内に響き渡る叡智の羽音だけがおれの精神(たましい)に安らぎと尊厳を与える。ああ、だが、きみよ、おれの運命の女よ、静謐な賢者の柩をこじ開けてその馨しき禁断の蕾が零れ落ちるとき、陰鬱な戀の火焔が揺蕩ひて狂はむばかりの堕落へとおれを追ひ立てるのだ。

    • 第二回

      第二回

      見よ、街を灼き尽くさんと 地平線にその身を横臥へる太陽がおれを嘲笑つてゐる見よ、四方八方を取り囲む山々が 凍えるやうな冷酷さをもつておれを罵つてゐる悪魔に魂を売り渡し、聖女の上衣(ローブ)を踏み躙つたおれを。清廉潔白の民よ、さうだ、罪深いおれを赦すなもとより逃げ場のないおれだこの堅牢な檻の中で 我が最愛の悪徳に誓ひをたてよう。

    • 第三回

      第三回

      万物に平等に降り注ぐはずの朝日にさへも わが魂は見放された。一片の光輝(かがやき)すらも届かぬこの深淵では疑念と欺瞞が呪ひのやうに渦巻ゐて、哀しき戀の亡霊が 沈鬱な執行人さながらに粛々と 黒光りの断頭台へとおれを誘ふ。身動ぎもせず祈りを捧げる清らかなる乙女よ、無慈悲な別れの其の瞬間に愛しきお前の憐憫をのみ、おれは請ふだらう。

    • 第四回

      第四回

      夜な夜な現れては消える、青い夢の女、我が天使あなたの其の聲、其の匂ひ、其の微笑みに、癒されてゆく我が魂 我が恐るべき情熱如何に人々が我を蔑まんとも、幸福と光に盈ち溢れた我が天使よ、絶望に打ちのめされたこの憐れな瀕死の男にひとたび貴女の瑠璃色の慈愛が投げかけられれば朽ちかけた命の炬火すらも蘇り、亦、輝きを取り戻す。

    • 第五回

      第五回

      耀きわたるこの大空の下で剣呑さの欠片も感じさせぬ、浮かれたこの日曜の町中で今この瞬間にも、悪魔めが、おれを誑かさんと手薬煉を引ゐておるのだこの皮一枚の下には、おれ自身にすらも制御の出来ぬ恐ろしい獣が居て、隙あらばおれの内側から破つて出でて、この世の惡業の限りを貪り尽くさんと虎視眈々と機会を窺がつて居るのだ。

    • 第六回

      第六回

      苦腦、恥辱、後悔、啜り泣き、おれの魂を腐蝕させてゐるすべての闇を愛し君、我が戀人よ、お前は知つているだらうか?お前がその美しく白い腕(かいな)でおれを抱くとき、お前がその純真で高潔な胸の中でおれを思ふとき、おれはおまえを欺ひてゐるに等しいことをとは云へ、おれには、真実のおれをおまえに打ち明ける勇気がないのだ。

    • 第七回

      第七回

      切ないほどに苦しく真摯な告白のそのあとに即座に裏切りを果たす 我と我が身の愚かしさよ遅すぎる懺悔は、もはや永久に届くまい。何處まで行っても解放されることのない 呪いにも似た宿命此の身に宿つた 醜悪極まる欲望の断片を手当たり次第、其処(そこ)彼処(かしこ)にぶち撒けては獣のやうに雄叫びを上げながら灼熱業火の地獄へと堕ちてゆくのみだ。

    • 第八回

      第八回

      冷たい太陽が地平線の上を揺らめく頃、おれに課せられた烈しい苦悶は、何時しか甘美な快樂へと移り行くまこと 驚くべきことだが、あれ程までに抗い、退けてきた惡夢が今となつては名残惜しい饗宴(うたげ)の残肴のやうにおれの心に羨望の念さへ湧き起こす。白日の下に曝け出された魂の罪業が毒薬の如く全身に染み渡るのに おれはただ酔ひしれる。

    • 第九回

      第九回

      おれたちは 永劫不滅の報いを受けて光に満ちた樂園から追放されたアダムとイブの因果のもとに無慈悲にも行き場のない路上に打ち捨てられた崇高かつ憐れな人間の成れの果て。おまえもおれも 胸の内に抱えてゐるのは等しく同じ 底知れぬ真暗闇の深淵だ。神を求め、光を求め、己の罪を認めるがゆえ、おれたちは 此の先も果てのない苦惱(くるしみ)を強いられるだらう。

    • 第十回

      第十回

      『少年よ、どんな気分だ。 凡てが虚構に過ぎぬことを思い知らされた今宵、この陰惨な苦惱の瞬間は。今の今まで、己を保つために信じてきた僅かばかりのささやかな哲學が崩壊するさまは』惡魔が目敏く絶望の匂ひを嗅ぎ付けて來て 少年に問ふ。容赦なく降注ぐ冷たい雨粒がただでさへ蒼い少年の頬を更に蒼白く変へて少年は無言のまま、暗い森に立ち竦む。

    • 第十一回

      第十一回

      漆黑の夜に降る 鉛のやうに重たい雨が、硝子窓を激しく叩ゐて 瀕死の罪人を情け容赦なく責め立てる夏の湿り気が鬱陶しくも纏わりついて 躰の自由を奪ひとり、僅かな過失も赦さない不文律の檻の中に彼の者を押し込めてしまふ然(そ)うして この世界から隔てられてしまつた哀しき魂は貞潔なる孤独をその身一つに背負つて 無間地獄の闇の中で 永遠に沈黙した。

    • 第十二回

      第十二回

      かつてあの女(ひと)が描いて見せた黄昏の魅惑に再び相まみえることが出来るのなら、譬(たと)へば それが天国でも地獄でも 一向構はぬ嵐を孕む鈍(にび)色(いろ)の空の下で身動ぎもせず、おれはただ待つてゐるもはや 足掻いたり騒いだりすることに何の意味もないことは 厭と謂ふほど承知の上だおれはただ、あの眩暈のするやうな混沌の季節の中へ もう一度呑まれたいと切に願ふのだ。

    • 第十三回

      第十三回

      過ぎし日の甘い悔恨 狂おしい春の暴風雨(あらし)あの地獄の季節に置いてきた 若さゆへの過ちの代償を 何時の間に清算した気になつてゐる?われら 決して逃れる事は叶わぬわれら 永久(とわ)に溜息を漏らすのみだ汝、―――我が同類、観衆よ、括目してみよ!眼前の灼けた鋼の如き華をこれぞ『惡』 これぞ『罪』われらの魂に押された永久不滅の贖罪の烙印。

    スタッフ

    • アニメーション制作

      ZEXCS
    • キャラクターデザイン・総作画監督

      島村秀一
    • シリーズ構成

      伊丹あき
    • 別冊少年マガジン

      講談社
    • 助監督

      平川哲生
    • 動画監督

      佐藤可奈子
    • 原作

      押見修造
    • 実写制作

      ディコード
    • 掲載誌

      別冊少年マガジン(講談社)
    • 撮影監督

      大山佳久
    • 監督

      長濱博史
    • 編集

      平木大輔
    • 美術監督

      秋山健太郎
    • 色彩監督

      梅崎ひろこ
    • 製作

      「惡の華」製作委員会
    • 音楽

      深澤秀行
    • 音楽制作

      スターチャイルドレコード
    • 音響監督

      たなかかずや
    • 別冊少年マガジン

      講談社

    キャスト

    • 三宅麻友

      原紗友里
    • 仲村佐和

      伊瀬茉莉也
    • 佐伯奈々子

      日笠陽子
    • 小島建

      浜添伸也
    • 山田正和

      松崎克俊
    • 春日高男

      植田慎一郎
    • 木下亜衣

      上村彩子
    • 松崎克俊

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