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    3. アニログ小説「おふ恋」Episode7

    アニログ小説「おふ恋」Episode7

    本編

    【第四章:一】

     スケスケはギルドからBANされた。

    彼は必死に抵抗したが、庇う者は誰もいない。

    『電光石火のモブアサシン隊』オープンチャットでも『戻らせてください、俺、頑張るっすから!』、という返事の来ない一方通行のメッセージが虚しく入り続けるまま時が流れた。

    結果、俺のログイン時にプライベートメッセージが届くことになる。

    スケスケ:どうすれば戻れますかね→ギルド

    無理だろう……

    ナイトレイ:難しいだろうね、もう別のとこ探したら?

    スケスケ:嫌ですよぉ、俺そこがいいっすもん

    なら、もっと真面目に頑張ったらどうだ……

    ナイトレイ:君どう見てもガチっぽくないし、うちガチギルドだから

    スケスケ:え、そうなんすか?

    ギルド紹介欄にそう書いてあっただろう……

    スケスケ:俺もっとワイワイ楽しくやりたかったんすけど、ユージーンさんめっちゃマジじゃないすかー

    だからそれをガチと言うんだよ。

    ナイトレイ:他当たりな。下級ギルドならゆるいだろうから

    スケスケ:やだ、そこがいいっす

    駄々っ子か、お前は、駄々っ子か。

    ナイトレイ:それならもっと頑張らないと。いずれにせよスウは怒ってるから脈もないだろうし。

    スケスケ:そうっすかね

    そうっす。

    スケスケ:でも、一応言ってみてもらえませんか? 俺が戻りたいって言ってたって。一生のお願いです、ナイトレイさん!

    出た、必殺技。

    ナイトレイ:見込みないと思うよ。オープンチャットでも完全無視されてるしねぇ、君。

    スケスケ:そこを何とか、お願いします!

    押し売りセールスマンか、お前は……

    ナイトレイ:ひとつだけ聞きたいんだけど、どうしてそんなにスウがいいの?

    スケスケ:直感っす。ビビビッと来たんすよ、オレ。

    ほら、ナイトレイさんだって気持ちわかるっすよね、キャンディさんにビビビッと来たんでしょ?

    ちがーう! いや、そうだけど、ちょっとちがーう!

    ただここでどうしてスケスケが俺に執拗に相談してくるのか、わかったような気がした。俺達は、同志、だったのだ。

    つまり邪険にできない理由も、そこから来ているのだ。

    ナイトレイ:わかったよ、機会があったらね。

    スケスケ:あざっす! 兄貴!

    それから2週間ほど過ぎた頃、様子を窺いつつメンバーとレイド討伐していた俺は、あることに気がついた。

    それは会話に活気が感じられない事、そしてチームワークにも以前のようにしっくりくる感じがない。

    ユージーン:ほら、みんな気合いを入れるのだ! 今まで失った分を取り返さなければ。倒して倒して倒しまくるのだぁー!

    「うん、そうなんだけどねぇ……」

    ユージーン:どうしたんだ、キャンディ!

    マリオネット:なんや調子狂うんやなぁ。いたらいたで腹立つんやけど

    ユージーン:マリオネットまで!

    やはり皆、スケスケロスを少なからず感じていたようだ。何と自然な流れ、どうやら思い悩む必要はなかったらしい。

    これは絶好のチャンス、と俺はこう切り出した。

    ナイトレイ:スケスケ戻してあげない? 本人も望んでることだし

    マリオネット:だから腹立つんやって、いたらいたで

    ユージーン:何を言うのだ! ここはガチギルドだぞっ、あんなやる気のない人間を仲間に入れるわけにはいかないのだっ! 統率が乱れるだろっ!

    ナイトレイ:スウはどう思う?

    スウ:実際あのレイドイベントはギルドとして過去最高に盛り上がったかも

    ユージーン:あれはバフを全開にしたからだっ!

    マリオネット:確かにな。あの時バフなしであいつがいたらと思うとぞっとするわい

    ユージーン:そうでしょうそうでしょう

    ナイトレイ:別に討伐メンバーからは外せばいいだけでは?

    マリオネット:確かにな、ただそれ意味あるんかい?

    ユージーン:統率が乱れてしまうぞっ!

    「賛成」

    マリオネット:オバハン、くちゃくちゃいわすなー!

    ナイトレイ:スウは?

    スウ:どちらでもいいです

    一人反対、二人賛成、他どちらでもいい、ということで、多数決により、スケスケはまたギルドメンバーとして復帰することとなった。

    ◇◇

    スケスケ:たっだいまー! みんな、会いたかったよー!

    ユージーン:あくまでも名前のみ、だからな、討伐メンバーとしては認めんっ!

    スケスケ:えー、またやりたいっすよ、みんなで冒険。俺活躍したじゃないっすかぁ

    マリオネット:あかん

    「スケちゃん、お帰りなさい、寂しかったわぁ」

    スケスケ:ただいまっす! キャンディさん!

    ナイトレイ:スケスケ、もう少し謙虚にね、また追放されちゃうよ

    スケスケ:了解! 俺、頑張るっす!

    痛い目に遭って少し従順な素振りを見せたスケスケであったが、舌の根も乾かぬ内に例のアレが始まった。

    スケスケ:次のオフ会いつにします? もうすぐクリスマスじゃないですかぁー

    スケスケ:(ナイトレイさん、力を貸してくださいっ! クリスマスが来ちゃうっすよぉ!)

    次から次にこいつは……と深いため息が漏れる。

    まあいい、ボランティア精神、恋のサンタに徹するのも悪くないだろう。せめて、できない弟の恋は実らせてやろうではないか。

    ナイトレイ:今年も俺はシングルベルなので、いつでもオッケーですけど

    マリオネット:俺もや、奇遇やな

    今のところ、中年おじさんと同類の俺……

    「ナイトレイは良い子なのにねぇ。マリオネットは仕方ないけど」

    マリオネット:なんやとー!

    天の声とシングルの言い争いが勃発。

    話を元に戻さなければ……

    ナイトレイ:ユージーンとスウは、来れそう?

    スウ:クリスマスは、無理

    その瞬間スケスケのシングルベルの鐘の音が、鳴ったような気がした。

    マリオネット:見た目によらず、彼氏持ちかい

    スウ:いえ、別ゲーのイベントがあるんです

    その瞬間スケスケが息を吹き返した音が、聞こえたような気がした。

    スケスケ:別ゲー? 俺もやりたい!

    スウ:このゲームと似て、討伐系なんだけど

    スケスケ:それでもやりたい!

    押しだけはつえーなーお前……

    マリオネット:面白そうやなぁ

    「そうねぇ、面白そう」

    ナイトレイ:みんなで参加できそう?

    スウ:構わないけど

    スケスケ:やった!

    ナイトレイ:ユージーンは?

    ユージーン:俺はちょっと……

    えっ、えっ?! 嘘だろ……まさか……

    マリオネット:彼女か?

    ユージーン:……はい

    ガーン

    という鐘の音がした、気がした……

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