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    3. アニログ小説「おふ恋」Episode5

    アニログ小説「おふ恋」Episode5

    本編

    【第三章:一】

    「ねぇ、聞こえるー?」

    ゲーム中キャンディの大声が突然響き渡った。

    ユージーン:キャンディ、ボリューム!

    ユースケ:耳いたっ!

    マリオネット:オバハンの声ゲーム中聞きたない

    スウ:VCですか?

    「それ、なあにー?」

    ユージーン:だからでかいのだっ、音が!

    ナイトレイ:ボイスチャットです。話せるようになったんですね。

    「そう、娘にやってもらったのー」

    キャンディは文字入力が鬱陶しいと、ついにVC参入を果たしていた。

    戦闘はこちらの方がスムーズにいくのだが、顔を知らない者同士では躊躇してしまう傾向がある。

    スケスケ:ねぇ、次いつやります?→オフ会

    急に自分の話を持ち出す自由人ユースケ。

    ユージーン:スケスケっ、戦闘に入ったのだから、集中だっ!

    マリオネット:またやりたいんかい? 好きやなお前

    スケスケ:秋の部はまだっすよ

    マリオネット:四季折々やるなんていつゆーた?

    スウ:会っても結局レイドやるんだから、同じかと

    「いいよー」

    スケスケ:ナイスキャンディさんっ!ナイトレイさんも、やりたいっすよねっ、ねっ!

    ユージーン:スケスケっ、戦闘に集中しろっ、集中をっ!!

    スケスケ:(一生のお願い! オッケーしてくださいっ! 俺クリスマスまでに彼女欲しいんすよー!→スウちゃん)

    またしてもプライベートメッセージが届く。そんなお願いだけで命を天秤にかけるのか、チャラ男よ。

    ただ、何となくだが、邪険にはできない自分がいた。

    ナイトレイ:条件をつけたらどうかな。スケスケがレイド討伐活躍したらやる、とか

    スケスケ:(そ、そんなぁ……)

    そこは、頑張ります、だろ……

    マリオネット:なるほどー、面白い

    ユージーン:モブ100体討伐!

    スケスケ:無理っすよー、そんなにわー

    スウ:次のレイドイベントで結果を残したら、とか

    ユージーン:それはいい!

    マリオネット:決まりだな

    スケスケ:レイドって、なんすか?

    メンバーを再び沈黙に陥れたユースケ。

    バリッボリッボリッバリッ、と煎餅を食うのだろうキャンディの咀嚼の音が、戦闘中ずっと、響いていた。

    それ以来ユージーンによるユースケへの特訓が開始されたようだが、俺は大学の授業に忙しくなり、ログインもまちまち。

    たまに入ればユージーンの憔悴っぷりが半端なかった。オフ会という餌があるにもかかわらず、ユースケの物覚えは超がつくほど悪い。

    レイドイベントで活躍することなど無理に等しい状況だった。

    スケスケ:(どうしよう俺死にまくってるんっすけど。これじゃあイベントもやばいっすよー、どうにかなりませんかっ、オフ会やりたいんっすよ、何とかしてくださいっ、ナイトレーイさーん! 一生のお願い!)

    久し振りにログインすれば、ザ・他力本願、チャラ男渾身の必殺技『一生のお願い』をお見舞いされる。

    ただ、よくよく考えればこんな流れに持って行ったのは、提案した俺の責任である。そもそも最初からオフ会に賛成しておけばこんなことにはならなかったのだ。

    仕方ない、と俺はスケスケにある秘策を授けた。

    スケスケ:じゃじゃーん!

    ユージーン:そ、それはっ!

    スウ:激レアアイテム

    「どうしたのよ、それ?」

    キャンディが天の声のように聞こえるのだが……

    マリオネット:ついに盗みを働いたか

    スケスケ:違いますよー!ナイトレイ兄貴が協力してくれたんす!

    そう、俺はこれまでのレイド討伐でゲットし、温存してきた超ウルトラスーパーレアアイテムを彼に譲っていた。

    マリオネット:それやったらお前の努力ちゃうやんか。他力本願はあかんでー

    スケスケ:他力本願ってなんすか?

    ユージーン:他人にばかり頼っていたら駄目だよってことだっ! どうしてこんなにも上達しないのか(涙)

    スウ:役に立つならばそれでいいかと

    スケスケ:ほら、スウちゃんはオッケーってことで

    ナイトレイ:作戦は彼がおとりになること、それだけです。

    ユージーン:ハンターがおとりになるなんて前代未聞だな。面白い、その実力見せてもらおうか!

    「頑張ってねー、スケちゃん」

    スケスケ:はい! 頑張るっす!

    最近はこの不出来な新人に散々振り回されっぱなしのギルドメンバー達。不安ばかりが募る中、レイドイベントはついに開幕した。

    スケスケ:こ、怖っ! 頭が3つもあるー!

    ユージーン:いいか、スケスケ。お前に限っては戦闘中のカキコミは禁止にする。逃げに集中するべし。忠告はちゃんと聞くように

    スケスケ:了解っす

    ザーザザザー「あら、何かしらこれ……」ザザーザザザザー「あら、何かしら……」

    ノイズが発生したようだった。

    マリオネット:オバハンうるはい

    スケスケ:耳がいたーい!

    スウ:キャンディさん、マイクオフで

    ユージーン:スケスケはしゃべるなと言っただろう! 戦闘に集中だっ!

    スケスケ:わかってますよぅ、やりますx2

    気合いを入れたところでやることはただ逃げるだけ。バフで異様な輝きを放つ防具を身に付けたハンターは、ひたすらに攻撃をかわし、くらっては立ち上がったりで、七転び八起きのへんてこ奮闘っぷり。

    ハンター自身からは『俺こんな戦い方嫌っすよー』という叫びが聞こえるような、気がした。

    マリオネット:はははっ! 逃げ足だけは速いな、お前

    ただ見ていればモブはメンバーに攻撃を与えられないだけでなく、HPの方も想像を絶する速さで削られていた。

    気がつけば、メンバーは皆超レアバフを全開にしていたのだ。

    み、みんな……

    ユージーン:さあ、次行くぞー、次だ次ーーー!

    バフの効果が切れるまで、休む間もなく次々とモブを討伐していく。

    これは課金勢の疑似体験も同然だった。正に最高の気分。

    そして終了後、ユースケはこんな一言を放った。

    スケスケ:なーんだ、ちょろいっすね、レイドイベントって

    アニログ小説「おふ恋」Episode1

    アニログ小説「おふ恋」Episode2

    アニログ小説「おふ恋」Episode3

    アニログ小説「おふ恋」Episode4

    アニログ小説「おふ恋」Episode6

    アニログ小説「おふ恋」Episode7

    アニログ小説「おふ恋」Episode8

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